現代マンガの全体像

f:id:naok1mor10513:20190721134900j:image

 

もはや日本のみならず世界にまで影響力を持つに至った日本の「マンガ」を体系的にまとめた評論集がないことを以前から憂えていた著者渾身のマンガ評論集。1950年代から1990年代にかけてのマンガ界の少年誌青年誌などの変遷。個別作家論など多岐に渡り該博な知識を一体どのように手に入れたのだろうかと考えていたが、ウィキペディアで見る限り著者の持論が「一を聞いて十を知り百を語るべき」ということなのですべてを読んできたというわけではなさそうだが、それでいてというよりそれだからこそ適菜収氏に「昔から言うことが変わらずしかも外していないのは呉智英だけ」と言われる著者の仕事ぶりは圧巻である。敬服に値する。マンガ作家論で出てきた名前何人かは知ってる人も居たし今読んでるいがらしみきお大友克洋など取り上げられていて興味深く読んだ。その他赤塚不二夫楳図かずおはるき悦巳などあらためて興味が湧いた人初めて知った人などいつか読みたい。著者のように十を知るとはいかなくともせめて一を聞いて三を知るくらいにはなれたらなと思う。それにしてもマンガはまだましかも知れないが評論そのもの自体の分野は今どのような状況にあるのだろうか?2、3の人を見る限りみんなTVなどから出なくなるととたんに忘れさられるような状況になっている気がする。それを望んでる人は良いのかも知れないがここに評価経済社会の弊害というべきものが出ている気がする。ただ自分が知らないだけで相手の数字が小さいからと軽んじられてしまう気がする。外見ではなく中身で、本質を見抜く審美眼がいよいよ問われる気がする。このような状況はその分野にとっても、おそらく全体にとってもあまり良い状況とはいえないと思うのだが仕方がないとあきらめるしかないのだろう。先人たちがそうであるよう。黙って粛々と仕事を続けるしかないし自分もそうしようと思う。