生きるとか死ぬとか父親とか

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愛憎うずまく親娘関係に、著者ならではの巧みな表現が散りばめられていて、思わず声に出して笑ってしまう。男性目線としては父親に、子供目線では著者に共感しながらも、だらしのない父親に著者と一緒になって苛立ったりもする。だけど一貫して徹底してる女性への軟派な態度は、段々とカッコよく、粋に見えてくるから不思議だ。一時期商売が相当成功していたというのも決して無関係ではないのかも知れない。ひょっとしたら競合他社の人間は「怪文書を回す」ことしか出来ないくらい、父と取引先の関係が蜜月だったのかも知れない。著者の軽妙で洒脱な文章の才能の一部は、間違いなくこの父から受け継がれたものであろう。決して相性が良いとは言えない「父」と「娘」だが、その関係も中年を過ぎて「人」と「人」として接する時にようやくうまく付き合えるものなのかもしれない。でもそれは「母」の不在があったらばこそだと思う。ようやく三人家族になれたこの先をまた是非読んでみたい。