黄昏流星群34

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「武士の星空」その昔、寛政十一年(西暦1799年)大川原藩の出来事。白兼家三男の矢太郎は16才になり三日月家に養子に出されることになる。この時代の下級武士の嫡男以外の人間は、矢太郎のように家督を継ぐ子供が居ない武家に養子に行くか、能力を認められ藩に務め独立するか、金持ちの武家に用人として召し抱えられるか、身を持ち崩して素浪人、用心棒になるか、あるいは野垂死ぬかと結構シビアな世界に生きている。かなり実力や運や人脈に左右されそうだ。そういう意味では芸人の世界に近いかもしれない。腰に真剣こそ差してはいないが。三日月家に入った矢太郎は早速養父藤十郎に挨拶に行くと、勉強の才を買われ藤十郎の参勤交代の代わりに江戸にある昌平黌(しょうへいこう)という学校に通うように命ぜられる。武芸よりは勉学に向く矢太郎は昌平黌で旗本の子らに交じって頭角を現していくが、武芸全般の指南役である宇田川象山に見初められる。だが矢太郎はその象山のご新造様の陸に一目ぼれする。だがその陸は藤十郎と不倫の関係にあり、そのことにうすうす気づいていた象山は藤十郎とついに果し合いをする事態に。勉学には才覚があるが武芸はてんで駄目で”腰抜け”と呼ばれていた藤十郎であったが、実は過去に居た小俣藩では”甲斐の小天狗”と呼ばれた相当凄腕の剣客であった。過去一度手を合わせた時にその実力に薄々気づいていたほどの自身も相当な無双の剣客である象山だが、運は藤十郎に味方をし象山は憤死する。しかしそのあとも世間体と象山に配慮して一緒にならなかった二人だが今は高台の街が見渡せる景色の良いお寺のお墓に入りふたり静かに佇んでいる。そしてその思いはしっかり養子の矢太郎と二人の娘のぬいの間にに受け継がれている。いい話。