ゾディアック

実際の未解決事件を元にデビッドフィンチャー監督が描くクライムサスペンス。未解決事件だと知らなかったので途中までどうなるのかワクワクしながら観たがあれ?これひょっとして未解決事件なのか?とピンと来てからはそういう見方に変わった。犯人と疑われたリーがやっぱり真犯人のはず…と最後まで疑っていたが最後の最後で…あの子憎たらしいまでの笑顔を見て主人公と一緒に絶望の淵に叩き落とされた。主人公の顔を知っていたならあんな屈託のない接客スマイルを向けられるはずはない。それはイコールリーが犯人でないことを証明する。じつに味わい深い名シーン。のちにDNA検査までしたがまたしても不一致の結果。その年リーは心臓発作で死亡し真犯人は謎のまま現在も捜査中という字幕で映画は終わる。実にあっけない幕切れ。この事件に翻弄され犯人に人生を狂わされた刑事、記者、漫画家たちの顔…顔…顔。疲れと孤独が深く刻みこまれている。こんなことなら途中で事件から離れた刑事の元同僚の判断が一番正しかったとさえ思えるじゃあないか。たとえ大きな仕事の成果は残せなくても、その後の人生少しは(少なくともあの3人よりは)まっとうに暮らせたはずだろう。そんな考えの人間は映画の主役になれないのかも知れないが、ささやかな幸せは手にすることが出来るはず。諦観も大事。なのかも知れない。