夏の闇

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輝ける闇に続いて読んだ。前作と作品の世界観は共通しているがあくまでも別々の作品という認識で良いのだろう。それにしてもやはり作者の作家としての才能をこれでもかと見せつけられる思いである。素晴らしく豊かで鋭い感性から紡ぎ出される言葉の数々にその国の天候まで感ぜられるような気がする。そして一見その私小説的な内容が余りにも微に入り細を穿つ表現なので実際に作者はこういう生活を送っているのでは?と疑ってしまうがすべて作家の想像力で作り出した世界である。余りにも肉薄し過ぎた写実主義は写真と見た目が変わらないように現実視してしまうものだ。まぎれもない芸術家の仕事と思う。特にそれが顕著なのは「輝ける闇」でもそうであったように性交のシーンと薬物を使用した後の恍惚の感覚を描くシーンだ。この二つはおそらく作家としても冥利に尽きるというか一番の腕の見せ所でもあるから気合も入れて書いたのだろうけど、何度ももほんまにやってんちゃうかと疑ってしまう(正直まだちょっと疑ってる)この表現はやったことがないけれど分かる気がするという不思議な感覚と善悪の境界線が曖昧になる感覚を読者に受けさせる。それもすべては作家の文章力のなせる技であろう。以下引用するのは恋人と釣りに行ったときの青カンみたいになったちょいエロシーン。「女は草に跪くと、そっと私のズボンに指をふれて、ファスナーをさげ、たったいままで眠りこけていたのに、ふと細い指でふれられたばかりに見る見る昂揚してしまったものを、眼を閉じて一度口いっぱいに頬ばってから音たててはなし、クローバーの花輪をひっかける。女は体を折って哄笑し、軽く拍手して、あたりを跳ねてまわった。」恥ずかしいけどちょっとM心をくすぐられる名文だ。