日本資本主義の精神

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確か適菜収氏の本で紹介されていて著者のことを知り、今回はじめて読むことが出来た。著者紹介のページを読むと山本書店を立ち上げ店主として主に聖書関係の出版物を刊行する傍ら評論家としても活動を続ける。とあって驚いた。まさに本書で紹介されている石田梅岩とそっくりではないか。梅岩は商家で番頭をしながら私塾を開いて後進を育てていった。それに対して著者は出版を通じて明晰な評論を世間に広く知らしめている。そのどちらもいわゆる市井の人として生きながら知り得た知識や考え方を惜しげもなく社会に還元している。この庶民の意識の高さが仕事を精神的行為として捉える「モーレツ」社員を生み出すのだろう。もちろん長所は同時に短所でもあるという著者の冷静な指摘を見逃してはならないが。以下メモした箇所「自らが機能しようとすれば、まず、その共同体の一員となることが前提となる、それは他の共同体に属しつつ、機能集団では個人として機能するということは不可能である、ということでもある。」組織で活躍する為には絶対必要な観点。「だが、世の中でもっともむずかしいのは、実体を正しく見て、それに対応するあたりまえのことを実行に移すことなのである。」あたりまえのことをあたりまえに出来る=それがプロなんだと思う。や「事実を事実のまま見ることができれば、問題の大半は解決したに等しい。(中略)もちろん虚構を掲げる扇動家は、いずれの時代にもおり、それが一時的には人を動かすが、経済合理性の無視がどのような結果を生じたかは、ある意味で全日本人が学んでいた。」など。扇動家、煽動家は現代にもまさしく居て、その声の大きさや激しさに気圧されず煽られることなく冷静に言っている内容を吟味して判断することを心掛けたい。とても示唆に富む内容でよかった。また別の著書にも挑戦したい。