箱男

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初めて安倍公房を読んだが、演劇をやっているということで多分に演劇的、映画的な作風で特に序盤から謎だらけの男が箱男になった経緯を一人語るところはとても惹きつけられた。世界観の構築の仕方がとても面白い。「ズボンさえ履いていれば何とかなる世の中はズボン社会だ」という言い回しが気に入った。

 


ただこれは作者としては不本意かも知れないが、映画的ゆえに箱男が一体どんな見た目なのかはとても気になった。出来れば絵か写真を挿入して欲しかった。文中で箱のサイズに言及したところはあるが、しっかりとしたイメージを規定して欲しがるのは、マンガやアニメ全盛の現代の客に特有のニーズなのかも知れないが。下腹部らへんの繋ぎ目部や内側部の防水加工や道具を吊り下げでいる感じなど見たかった。

 


後半に終わりへ向かっていくたびに今度は箱男が誰なのか?の他にこの書き手がいま誰なのか?箱をかぶってるのか?いないのか?まで支離滅裂で理解不能の状態に陥ってしまったが、その中でも幾度となく出てきた覗き見するシーンは大いに変態性を刺激され、エレクトしそうになった。半エレクトくらいした。安倍公房も三島や開高と同じようにエロい描写がエロい。しかめ面で読んでるこっちの身にもなって欲しい。

 


後半はかなり難しかったが序盤だけで十分お釣りが来るほど楽しめた。映像化(かなり難しいやろけど)されてるなら見てみたい、どこか村上春樹っぽくもあるように感じた。(この場合村上が安倍っぽいというべきか?)西欧に通じる、文章が英語で書かれても分かりやすそうな日本語の書き方なのかも知れない。実際に通じてるから逆にそう思えるだけなのかも知れないが…

 


その他の作品も読んでみたい。