パラサイト 半地下の家族

前評判が高く又天才と評される監督の作品、おどろおどろしいパッケージがすべて計算され尽くした絶妙な「前フリ」だったと気づいた時思わず膝を打った。所謂ネタバレもの大ネタものの類になろうかと思うが、こういう構成を持った作品は一度その構造を知ってしまうと大概二度目から観ていられなくなるものだが、今作の類い稀な部分はその一度使ったフリをさらに別のフリにして韓国経済のリアルな貧富の「差」として描き出すことに成功している。街が洪水で流されたまさにその当日に、高台で我関せずパーティーを楽しむセレブたち。実に象徴的なコントラストを見せるある意味グロテスクな名シーンだった。そこに仕えている庶民たちの腹立たしくて情けない気持ちを現実にはただただ耐えるしかない恥辱に塗れた現実を父が少しだけ復讐してくれたのだ。セレブや第三者から見ればただの真っ昼間の凶行にしか過ぎないが、われわれにはどちらが被害者なのか一目瞭然にわかる。もう逆転は不可能かも知れないと分かっていてもいつかどこかでそんな父と再び出会えるその日を夢見ている主人公の姿とわれわれ庶民の姿が重なる。半ば諦めつつも最後まで諦めず、かすかな希望を糧に生きながらえる。その過程こそがまさに人生なのだ。