ウィンストン・チャーチル

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こういう史実を基にした映画は特に演出されていることを忘れて現実に起こったことだと錯覚しがちなので、その点は十分に気をつけて鑑賞しなければならない。ましてや政治の世界。魑魅魍魎が跋扈する世界。あなたが抱いた感想は決してあなたの意思でそう思ったのかどうか本当は分からない。知らぬ間にそう思うように演出されているのかも知れない。さも自分の頭でそう考えたかのように、そう思うように演出されているのかも知れない。しつこいくらいにその可能性に言及しているが、それでも足りないくらい、人間はいつだって忘れる生き物だ。公式の歴史は勝者の歴史とはいえ、そこから学ぶ事は大いにある。特にこのチャーチルという大政治家が下した判断が、その後の世界に大きな影響を与えたということは間違いなさそうだ。第ニ次世界大戦時下、怒涛の勢いでヨーロッパ各国を侵略しついにフランスまで蹂躙しようとするナチスに対しハリファックス卿らがパニックに陥り保身を考えたのも無理はない。(自分も始めは真っ当な意見だと思っていた。)そうと決まれば、体力があるうちに少しでも有利な条件で高く売ろうとすることも現実的なカシコい判断なのかも知れない。だがしかし多くの場合こういう時はその大前提が間違っていることが多い。最初の1が違うままそのことに気づかずどんどん間違えたまま考え進んでしまう。そういう判断ミスは世の中にごまんとあると思う。そんな中チャーチルは最初から相手に屈することを良しとせず、甚大な被害や犠牲者を出して批判に晒されながらも最後まで惑わされず、いや実際惑わされなかった訳ではない、現にカレーの部隊を助けないという判断をし兵士たちを見殺したような状況ではチャーチルは深く落ち込んいる。そんな時、奥さんがこんな言葉をかける。「その心の葛藤が、あなたを鍛えてきた、この時のためよ、欠点があるから強くなれる、迷いがあるから賢くなれる」と。迷いながら考えながら手を尽くしていく、こういう時は経験がモノを言う。この奥さんは本当に素晴らしくてとてもチャーミング。しかしナチスの勢い止まらず、チャーチルでさえ時勢に押され半ば諦めかけたその時にキングが支援を表明してくれる。その事で百万の力を得たチャーチルはもう一度戦う決意をする。その決意が、後々の、ものすごく大きな差となった。エンディングロールが流れる中で紹介されたチャーチルの言葉。「成功も失敗も終わりではない。肝心なのは続ける勇気だ」余りにも重い。そしてこの言葉を自分自身にも問いかけたい。そしたら奮い立たずにはいられない。最後の演説のシーンで野党?の議員が「何故こんなことになったんだ?」と呆然としてハリファックス?(他の議員?)に聞く「彼は言葉を武器に変え、戦場に乗り込んだんだ」と。言葉の力を侮ってはならない。いかに見た目が9割で表情や動きなどでほとんどの人は判断するといえども、それでも言葉にはちゃんと伝われば伝わりにくいからこそのもの凄いインパクトがある気がする。そんな気がした。より言葉を大事にしようと思った。だからこの感想もいつもりよりも時間を掛けて書いてみた。それにしてもゲイリーオールドマンの演説は見事だったし特殊メイクもめちゃくちゃ凄い。奥さんやタイピストとの関係などの描き方。いい演出。納得のアカデミー。